バックロードホーンスピーカーの解説ページ

1.バックロードホーンスピーカーと
  一般(2ウェイ)スピーカーの違い
  

 ここで簡単なご質問をさせていただきます。

@強い力 と A弱い力

どちらが物を動かすのに楽でしょうか?
 同様に

@軽い物 と A重い物

どちらが楽に動くでしょうか?
 答えはどちらも@ですね。

 これをスピーカーに置き換えると

A弱い力(非力な磁気回路)でA重い物(重い振動板)を動かすのが一般的な
 メーカー製スピーカー(バスレフ型や密閉型)のスピーカーユニット(低音用ウ
 ーファー)、

@強い力(強大な磁気回路)で@軽い物(軽量振動板)を動かすのがバックロー
  ドホーンスピーカーのスピーカーユニット(フルレンジ)です。

一般のスピーカーユニット(ウーファー) バックロードホーンスピーカーに使用
するスピーカーユニット(フルレンジ)

A弱い磁気回路で
A重い振動板を動かす。

→小型のキャビネットで低音を
  出しやすいが能率は低下する。





@強力な磁気回路で
@軽い振動版を動かす


→小型のキャビネットでは低音が
  出ないが、バックロードホーン
  エンクロージャーで真価を発揮
  する。
  しかしキャビは大型化する。



2.なぜバックロードホーンスピーカーか 

 それではナゼどちらも@の方がいいのが分かっているのに、メーカー製スピーカーは
どちらもAのスピーカーユニットを使用するのでしょうか?それは一般に販売されている
サイズの大きさのキャビネットに取り付けた時に、低音が出なくなってしまうからです。

 ですからユニットを低音用と高音用に分け(2ウェイタイプ)、低音のユニットはAにして
低音を出し安くします。こうすると能率(出力音圧レベル)が下がってしまうので、低音ユ
ニットに合わせて高音ユニットに抵抗(アッテネーター)を入れて、システムとして能率を
下げてレベルを合わせているのです。

 フォステクス6N−FE88ES
(8cm口径フルレンジ、限定生産品)

  強力な磁気回路で軽い振動版を動かすという
バックロードホーン専用ユニット

 バックロードホーンスピーカーに使用するユニットはどちらも@。要するにスピーカーの
理想です。強力な磁気回路で軽量振動板を動かす・・・、しかしこの理想は大きな矛盾
を抱えます。低音が出にくくなってしまうのです。というか一般に販売されているサイズ
のキャビに取り付けても、全くといっていいほど実用的な低音は出てきません。しかし
バックロードホーンエンクロージャーに取り付けることによって、十分な低音を引き出す
ことが出来ます。

 『理想的なスピーカーユニットの実力を最大限引き出す』

これがバックロードホーンエンクロージャーなのです。



 
バックロードホーンエンクロージャー基本原理
設計の基本ポイントは
1:空気室内容積の大きさ
2:スロート断面積の設定
3:ホーンの拡がり率の設定
4:ホーン全長の設定



当方KD3ケタシリーズ基本断面図
上の基本原理のままでは全く実用性が無い
ので、ユニット後ろのホーンを折り畳んで実
用性のある直方体の箱に収める。
ハッキリ言って左の設計ポイントを満たしつつ
実用的な直方体の寸法に収めるのはパズル
みたいなもので、試行錯誤の繰り返し。


3.メーカーがバックロードホーンスピーカーを出さない理由

8cm用BH
KD−80



10cm用BH
KD−100


  
究極の10cm用
BH
KD-S10000

 メーカーがバックロードホーンスピーカーを出さないイチバンの
理由は、量産が出来ないことでしょう。基本的に大量生産を前
提とした場合、バックロードホーンスピーカーのような複雑な構
造は全く量産に乗りません。もしもその様な工程を何らかの工
夫で克服したとしても、キャビネットの大きさに対してユニットの
小さいバックロードホーンスピーカーは、売りにくい(売れない?
)商品のはずです。

 音の鳴り方はどうでしょうか?

 決定的な違いは能率(出力音圧レベル)です。現在主流の
小型ブックシェルフタイプが82dB〜85dBくらいなのに対して、
バックロードホーンスピーカーは95dB〜102dBにも達します。
バックロードホーンスピーカーの方がほぼ10dBくらい高いです。
これはアンプのボリューム位置が同じ場合、より大きな音が出
せるということです。要するにエネルギー効率が高いという事
です。

 なぜエネルギー効率が高い=ロスが少ないのか?それは一般
のスピーカーにあるリミッターの要素が無いからです。基本的にフ
ルレンジユニットを使用するのでネットワーク(電気的素子)が無く、
後面開放箱に近い形で後方が抜けているために振動板が楽々と
動き、細かい音をよく再生します。何といっても鳴りっぷりが全く
違います。


 音に対しては好みの問題もあるので一概には言えませんが、
私はバックロードホーンの音が好きです。一般的なメーカー製スピ
ーカーの音はまず

1:低音がドロドロとだらしない
2:能率が低いので、音がスピーカーユニットの周りにへばりつい
  ていて耳まで届かない

という大きな2点において好きになれません。

 一度バックロードホーンスピーカーの音をお聴きになってみて下
さい。音が好みに合わなければそれまでですが、きっと一般のス
ピーカーとの音の違いにビックリされるハズです。

『こんなに鮮度の高い、キレイな音があったのか!』

と。さらに小口径フルレンジシステムから再生される、信じ難い低
音の量感と迫力と瞬発力にビックリされるハズです。



 この度、KD−100の貸し出しセットをご用意しました。
                   くわしくはコチラ。

                       平成13年11月6日(火)















↑KD−100内部構造



↑KD−S10000 
  下部音道BOX構造


↓KD−S10000
  上部ヘッド構造



長岡鉄男式バックロードホーンスピーカーの
 魅力を徹底解剖する
ステレオ誌特集記事より抜粋
長岡鉄男・著        

バックロードホーンの
特徴
















 スピーカーシステムにはそれぞれキャラ
クターがあり、特徴がある。仮に10の特徴
があったとして、あるユーザーにとって、10
のうち7つがプラスに作用し、3つがマイナス
に作用したとすれば、それはその人にとって
良いスピーカーである。8対2、9対1ならも
ちろんなお良い。同じスピーカーに対して、
別のユーザーが、10の特徴のうち3つしか
プラスがなく、7つがマイナスと感じたらそれ
はその人にとって悪いスピーカーである。同
じスピーカーに対してある人は名器と思い、
ある人は鈍器と思うのは特徴を特長ととるか、
欠点ととるかの違いなのである。バックロー
ドホーン(以下略してBH)は特徴の多いスピ
ーカーである。この特徴をどうとるかで評価が
分かれてくる。

 全てのユニットは全ての方式のエンクロー
ジュアで使用可能である。密閉では絶対に
使えないとか、バスレフでは絶対に使えない
とか、BHでは絶対に使えないとかいうユニ
ットは存在しない。FE203Σ(注@)も密閉
でもバスレフでも使える。しかしBHで使った
時に最も実力を発揮するユニットである。以
下は一般的なBHの特徴というよりは、FE
203Σを使ったBHの特徴である。他のユニ
ットのBHには必ずしも通用しないから注意
してほしい。

 

@高能率





















































 FE203Σ1発のBHでも99dB、2発入り
では102dBにも達する。203Σ単体の出
力音圧レベルは96dBだが、それがなぜ99
dBになるのか?。ユニットの周波数特性を
見れば分かるが、96dBというのは中低域
のレベルなのであって、高域はもともと100
dBに達している。BHに取り付けると、中高
域のレベルが少し上がってくる。これは空気
室だけ考えた時、超小型密閉箱になっており、
空気バネの働きで能率が上がるからだ。コー
ン型スコーカーの能率が高いのと似たような
ものである。中低域はホーンロードで空振り
が抑えられ、能率は大幅に上昇する。かくて
トータルで99dBになるのである。2発使うと
さらに全体に空振りが減り、3dB上昇して
102dBとなる。
 
 バットの空振りと、コーンの空振りは必ずし
もいっしょにはならないが、説明用にはバット
でも足りる。バットの持っているエネルギーを
ボールに与えるには、バットとボールの重さが
同じ場合が最も効率が良い。野球のバットで
ピンポンボールを叩いても、バットの持ってい
るエネルギーの100分の1しかボールに与え
られない。また砲丸投げの砲丸を叩いた場合
はバットがはね返されてしまい、これまたバッ
トの持っているエネルギーはわずかしか伝え
られず、大部分のエネルギーはバットに残っ
ている。バットとボールの目方が同じである時
が最も効率が良いのである。ただし、ボールを
より遠くへ飛ばす場合にはバットが重い方が
よい。これは「効率」とは別の問題である。

 コーンの場合も叩く空気の重さが重い方が
効率が良い。といってもコーンの上にのっかる
空気の量はわずかなものであり、空気の重さ
は1リットルで1.2gしかないから、平面バッフ
ル、バスレフ、密閉、どのタイプにしろ、コーン
と同じ目方の空気を叩くということは出来ない
相談である。ただ、コーンの前に囲いをつけて、
空気がこぼれないでたくさんのっかるようにす
ると、効率は上昇する。これがフロントロード
ホーンだが、囲いを後ろにつけるとバックロー
ドホーンになる。BHもユニット前面については
密閉、バスレフと同じ効率だが背面について
は高効率。しかもふつうのシステムは背面の
音を殺してしまって、事実上1/2の音圧しか
利用していないわけだが、BHでは背面の音
圧をフルに活用(中高域は殺してしまっている。
主として低音のみ)しているので、たいへん効
率がよいのである。

 ユニットの振動版の面積は口径の2乗に比
例して増えていくが、のっかる空気の量は口
径の3乗に比例して増えていく。口径が2倍
になれば、面積は4倍だが、空気の量は8倍
になる。つまり、口径が大きくなると効率は
上がるのである。2発使用すると面積は2倍、
空気の量は4倍、で、効率は3dBアップする
という理屈だ。




A高耐入力
















 フルレンジの耐入力は低域の振幅で決まる。
BHはホーンロードがかかっている帯域では、
密閉よりもコーンの振幅が小さい。しかしホーン
ロードがかからなくなる帯域では後面開放箱と
同等で、コーンの振幅は密閉より大きくなる。
従ってホーンロードのかかる50Hz付近までの
帯域では耐入力は特に大きく、ロードが全くか
からない25Hz以下では耐入力は小さい。
通常のソースに対しては耐入力は特に大きい
システムといえ、サブソニックフィルターを使え
ば、耐入力は常に大きいといえる。とはいえ、
能率が圧倒的に高いので、低能率スピーカー
のように数100Wも入れるということは不可能。
ミュージックソースで、203Σ1発用がピーク
50〜100W、2発用で100〜200Wだ。




B大音量再生














 能率92dBのスピーカーに100W加えて
得られる音圧が112dB。1kW加えて得ら
れる音圧が122dB。実際には1kWも入ら
ないので、最大音圧レベル122dBも無理
である。ところが能率102dBのスピーカー
なら、100Wで122dB、120dBを得るた
めなら63Wでよい。BHは大音量再生に適
しており、またパワーの小さいアンプでも十
分に鳴らせるので有利である。92dBのス
ピーカーに比べれば必要なパワーは10分
の1でよく、89dBのスピーカーと比べれば
20分の1ですむ。





C小音量再生










 BHはコーンが軽く、磁気回路は強力で
あり、またネットワークを使っていないこと、
一種の後面開放型であること等により微
小入力に対して特に敏感であり細かい音
をよく再生する。繊細感、ニュアンス、雰囲
気の表現には最も優れたシステムといえる。
大音量から小音量まで、リニアリティのよさ
は最高である。



D位相特性








 基本的にはフルレンジシステムなので、
位相特性は非常によい。ホーン開口からの
低音は明らかに位相ズレを起こしており、
時間差も生じているが、低域だけなので
音像定位にはほとんど影響がない。




E音源の集中











 トゥイーター、スーパートゥイーターを追加
したとしても、音源は狭い範囲に集中して
いる。低音のみはユニット側とホーン開口と
に分散するが、定位にはほとんど影響しな
い。以上、リニアリティのよさと位相特性と
音源の集中のおかげで、BHの音像、音場
の表現能力はバツグンであり、3次元的に
ピンポイントで定位し、広大な音場を展開
する。





Fトランジェント







 軽量で強靭なコーン、強力な磁気回路、
後面開放という性格からして、立ち上がり
は最高、立ち下がりもよい。




G歪み率









 ネットワークを使った本格的3ウェイに
比べると、フルレンジのBHの歪み率は
当然高くなる。ただ歪み率はサインウェ
ーブを安定した状態で入力して測定する
ものなので、ミュージックソースのような
パルスの連続では、トランジェントのよい
BHの聴感上の歪み感は意外と少ない。





H指向特性







 本格的3ウェイに比べれば指向性は
鋭くなる。特に2発入りBHの水平方向
の指向特性はよくない。リスニングポジ
ションは1点に限定されてしまう。





I低域特性














 低域はユニット前面からはダラ下がりに
50Hz以下まで出ている。ホーン開口から
200〜60Hzが高いレベルで再生され、
250Hz以上と、50Hz以下は、ダラ下が
りというより、急降下の形で減衰しながら、
25Hzまでは出ている。125Hz以下の
レベルは、ユニット前面よりホーン開口の
方が常に10dBくらい高い。ただ、位相は
かなりずれているので、ユニット前面と
ホーン開口のレベルがほぼ等しくなる
125〜160Hzのどこかで、鋭いディップ
(谷)を生じる。低域は通常の30cm3ウ
ェイと同程度のレベルで出てはいるのだ
が、中高域が10dB高いので、バランス
上は低域(主として80Hz以下)10dB
ぐらい低い感じになる。f特だの形だけか
ら見れば、3万円台のシステムのf特に
近い。これはクラシック用としては明らか
にデメリットになる。ただ、音そのものは
数10万円クラスに負けない。







Jアンプとの相性

































































 BHは小音量再生に優れているのだが、
それにはアンプの微小出力のクォリティが
問題になる。たとえばパワーアンプ、ある
いはプリ・メインアンプのパワー部(ボリュ
ーム以降)のSN比が、100W出力時
100dBだったとすると、1W出力時のSN
比は80dB。100mW出力時には70dB。
10mW出力時には60dB。出力音圧レ
ベル90dBのSPで100mW入力時の音
圧と、100dBのSPで10mW入力時の
音圧は同じであり、高能率のBHを使うと、
アンプのSN比が実質的に10dB劣化し
たのに等しくなる。またこのような小音量
時にはニュアンスや余韻やホールエコー
を司る微小信号はノイズに埋もれてしまう
し、さらに重要なのは機械振動(床からの
振動や音圧や、トランス、コンデンサー等の
自己振動等々)によって発生するランダム
ノイズ(ガサガサ、ザワザワ、モヤモヤ)だ。
ふつうのスピーカーでは気がつかないこれ
らのノイズが、BHではもろに出てくる。そ
れにどんなアンプでもローレベルのリニア
リティはよくない。それもBHにひっかかっ
てくる。ローレベルといってもアンプのパワ
ーに比例する。500Wアンプのローレベル
と50Wアンプのローレベルでは10倍の開
きがある。つまり絶対値でいうと、小出力
アンプの方がローレベルのリニアリティは
よいのである。
 
 つい最近も某メーカーがハイパワーのプリ
・メインアンプを持参した。自社で聴いても
いい音だし、他の評論家も誉めてくれたしと
自信満々。ところがこのアンプ、我が家では
なんともお粗末な音であった。1/3の価格
のプリメインと比較しても明らかに劣ってい
た。それはメーカーの担当者も確認したの
である。しばらくしてそのメーカーから回答
があった。「いつも低能率のスピーカーを
使ってフルパワーでテストしていました。
他の評論家宅でもそうでした。そういう使
い方では文句なしだったのですが、高能率
スピーカーでテストしてみたら、ローレベル
での質の悪さがもろに出てきました。目下
この点を改良中です。」


 BHに最適のアンプは、電源が強力でヘ
ビー級で、クォリティが極めて高く、しかも
あまりハイパワーでないもの(100W内外)
ということになる。具体的にいうとパワーア
ンプならローディのHMA−9500U(注A)
だ。29Kgというヘビー級でたったの120
W+120W。しかしMOS−FETのおかげ
で、バイポーラトランジスタとはクォリティが
違う。特にローレベルが抜群だ。しかし、こ
のアンプ決して万能型ではない。低能率ス
ピーカーに対しては明らかにパワー不足な
のである。

 なお、ついでのもうひとつ実例を紹介して
おくと、某メーカーから、音質最優先、特性
はともかく、音は世界一というアンプを送っ
てきた。鳴らしてみると、ひどいのなんのっ
て、前代未聞、ドブへ叩きこみたくなるよう
な音だった。で、調べてみると、そのメーカ
ーでは、能率82dBのスピーカーを鳴らし
ているのだという。筆者のBHと20dBの
差がある。これではどうしようもない。
なお、能率とパワーとの関係を数学的に説
明しておくと、102dBのスピーカーと120
Wのアンプ、92dBのスピーカーと1200
Wのアンプの組み合わせは同等である。
500Wのハイパワーアンプといって自慢し
たところで、90dB内外のスピーカーを使っ
ている限りはたかのしれたものなのである。
自慢したければ5kWクラスのアンプを買う
ことだ。




K混変調歪み
















 フルレンジ共通のウィークポイントとして、
混変調歪み、ドップラー歪みがある。同じ
振動版で超低域から高域まで再生する以
上避けられないことだが、ホーンロードが
効いて、低域でのコーンの振幅が抑えられ
ているので、同じユニットを密閉やバスレフ
で使うよりはよいといえる。混変調、ドップ
ラーを抑えるには本格的ネットワークによ
るマルチウェイ化しかないが、フルレンジに
L(コイル)を入れることによる音質劣化は、
混変調歪みドップラー歪みよりも大きいので
絶対に避けたい。ネットワークでがっちり固
めたマルチウェイとの比較で、聴感上の歪
みはむしろBHの方が少ないくらいである。
動特性のよさがBHの本領だ。






Lソースとの相性














 BHは振動版が軽く高能率であるため
小回りが効き、信号に極めて敏感である。
従ってソースがよければ圧倒的なハイクォ
リティで生々しいサウンドを聞かせるし、
フルオーケストラと大編成のコーラスの絶
叫するようなソースでも完全に分解しきっ
て、少しのにごりも歪みっぽさも見せない。
しかし、現実的にはそういうソースは極め
て少なく、ほとんどのソースはおそろしく
きたないのである。きたない風景はすり
ガラスを通して見た方がいいし、肌のきた
ない人物のポートレートはソフトフォーカス
のレンズか、レンズに紗をかけて撮影した
方がいい。それと同じで、一般のソースは
ぼけたアンプとぼけたスピーカーで再生す
る方がずっといいのである。BHを使用して
いるユーザーのほとんどがソース選びに苦
労しているのは以上の理由による。やはり
BHは一般向きではないということははっき
りいえる。



注@




FE203Σ:原稿就筆時点で唯一BH向き
だったフォステクス社製のスピーカーユニ
ット。現行製品ではFE208Σが後継機種
に当たる。



注A



生産終了。ローディ(日立のオーディオブ
ランド)には後継機種は存在していない。






 ↓以下、『オーディオ評論の神様』と言われた故・長岡鉄男先生が 「ステレオ」
1989年6月号(工作特集号)に掲載された記事をそのまま抜粋させていただきます。

なぜBHか?

 バックローデッドホーン、略してバックロードホーン、さらに略してBH。
今BHを作っているメーカーは日本にはない。海外でも極めて少ない。
なぜか。理由はたくさんある。低音が出ない。共振が多くピーク、ディッ
プだらけでf特がフラットにならない。低音に時間的な遅れが出る。トラ
ンジェント(立上り、立下り)が悪い。開口から余分な音が出てくる。ユニ
ットの口径に比して巨大なエンクロージュアを必要とする。等々、要する
にハイファイ用としては使い物にならない、ということでメーカーは見向き
もしないのである。ではメーカーが採用している密閉やバスレフは本当
にいいシステムなのか?ものごとすべて一長一短、密閉やバスレフも
欠点を拾い出してこんなものはハイファイではないと一蹴することは容易
なのである。振動板が重く、磁気回路が弱いので、トランジェントが悪く、
音が鈍い。共振(f0)だけを頼りに低音を稼いでいるのでトランジェントが
悪い。ユニットに比してエンクロージュアが小さいので、エンクロージュア
の板を通して音がもれやすいし、振動板の反動でエンクロージュアが動
きやすい。吸音材の使用で音が死んでいる。高音は軽い振動板で応答
が速いが、低音は重い振動板で応答が鈍く、低音に時間的な遅れが出
る。ウーファーのコーンは盛大に振動するが、ほとんどが空振りで、音圧
になる部分は少ない。大音量再生しようと思っても、コーンの振幅で制限
されてしまうので、基本的に大音量再生には向かない。能率も低い。密
閉、バスレフは一般にマルチウェイが常識であり、ネットワークやアッテ
ネーターによる音質劣化が著しい。音が濁り、鈍くなり、Dレンジの問題
は致命的といってよい。重い振動板のウーファーにボーカル帯域のかな
りの部分を受け持たせるので生々しい声の再生はまず不可能である。
その他、音源の分散、位相差、時間差、相互干渉といった問題も出てくる。

 そこでBHのメリット。基本的には小口径フルレンジが主役であり、ネット
ワークから開放される。振動板は軽く、磁気回路は強力、全域に渉ってト
ランジェントがよく、位相差、時間差もない。ボーカルも生々しい。低域は
原則としてf0を頼らず、というよりf0を押さえこんで、ホーンの効果でオー
ソドックスに再生するのでトランジェントがよく、またコーンの空振りがない
ので、低音の大音量再生でも振幅は極小、パワーが入る上に高能率なの
で圧倒的大音量再生が可能。一方、軽量振動板、強力な磁気回路、吸
音材ゼロ、後面が抜けている巨大エンクロージュアということから、微小
信号にも断然強く、従ってDレンジは市販システムに圧倒的な差をつける。
市販密閉、バスレフは振動板の実効質量(m0)とエンクロージュア重量
との比がせいぜい数百でしかないが、BHでは数千に達するので、ここで
も桁違いのトランジェント、力強さが期待できる。能率は市販システムに
比べて10dB以上高いので、100Wのアンプが1kW以上のアンプなみの
力を発揮できることになり、この違いは極めて大きい。メーカー製スピーカ
ーで絶対に聴けない音というのは、この能率の差によるところが大きい。
D-70にしてもスワンにしてもそうだが、一度しっかりしたBHの音を聴いて
しまった人はメーカー製システムには戻れなくなるのである。

 これほどメリットの多いBHをなぜメーカーは作らないのか、最初に挙げた
理由は実は建前である。古い教科書に書いてあったというだけのことで、
実験によって確認したものではないのである。古い教科書がまちがいだ
らけだということは度々指摘してきたが、最近ではメーカーも同じ考えの
ようだ。メーカーがBHを作らない理由、本音はこうだ。適当なユニットが
入手できない。キャリアもノウハウもないのでしっかりしたBHを設計でき
ない。エンクロージュアが複雑で量産にのらない。コストもぐんと高くつく。
ユニットのわりにエンクロージュアが巨大なので売りにくい。市場ではエ
ンクロージュアのわりにユニットの大きいシステムの方が売りやすいの
である。30cm3ウェイで6万円なら売れる。しかし20cm1発でウン10
万円では売りにくい。今回製作したD-55にしても、メーカーが作ったら
30万円以下では売れまい。



「ステレオ」 1989年6月号(工作特集号) D-55の記事冒頭ページより抜粋

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